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#]T/#]U/#]V/#]W/#]X/#]Y/#]Z/#][/#]\/#]]
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#]T
(ニブルヘダイ、奇岩地帯──)
> バァ=ダン 「本当に、こんな所に人が住んでたのか?」
> ビルト 「変な形をした岩が立ち並んでるだけだよな・・・」
> エスタージ 「奇岩地帯と言うぐらいだからのう」
> エスタージ 「だが、あちらに見える、上に向かって開いた煙突のような形の岩は、人が作ったものだぞ?」
> エスタージ 「『精霊の呼び笛』と言ってな、ある程度力のある精霊が近づくと、けたたましい音を立てる」
> バァ=ダン 「あれは、人が作った物だったのか・・・」
> エスタージ 「おお・・・、それに見よ。こちらの岩影には、女神の像があるぞ」
> ビルト 「げ、首がないぞ・・・」
> エスタージ 「ここらはゾーハルの領域だからの。遠慮して、外してあるのだ」
> バァ=ダン 「昔の人間の考えることは、分からんな・・・」
> バァ=ダン 「だいたい、こんな場所にわざわざ住まなくても、良さそうなもんだが」
> エスタージ 「実際、『大いなる災厄』までは、人はあまり住んでなかったようじゃな」
> ビルト 「『大いなる災厄』・・・?」
> エスタージ 「人と精霊が戦ったじゃろ?」
> ビルト 「知らん・・・。だったら、『大いなる戦い』とかになるんじゃないのか?」
> エスタージ 「突然に始まって、ほとんど一方的に人間がやられたからのう。『災厄』とも呼びたくなるじゃろ」
> エスタージ 「まあ、知らなくても、ここを通り抜けるのに問題はないわい」
> バァ=ダン 「どうせ、魔法の痺れがまだ抜けきらないんだ。話してくれよ、暇つぶしにな」
> エスタージ 「なんじゃ、まだダメなのか。弱っちいのう」
> エスタージ 「ならば・・・、そうじゃな。まあ、よかろう」
> エスタージ 「──そもそも、戦いを起こしたのは、人間を脅威に感じた、一部の精霊達じゃよ」
> エスタージ 「もっとも、一部と言っても、かなりの数に上っていたらしいがの・・・」
> ビルト 「人間が脅威か・・・。何でまた?」
> エスタージ 「人間は、世界中に無節操に増え続けていたし、多様な属性の力を、器用に使いこなしたからのう」
> エスタージ 「いずれ精霊は、人間に滅ぼされるか、隷従させられるかの2通りの道しかなくなると、危惧したようじゃ」
> バァ=ダン 「でも、人間が一方的にやられたんだよな?」
> エスタージ 「うむ、精霊は強かった。突然の事態に、大抵の場所で人間は、抵抗らしい抵抗も出来なかった」
> エスタージ 「ここニブルヘダイの奇岩地帯は、数少ない人間の拠点のうち、最大の物だったんじゃよ」
> ビルト 「そうだったのか・・・」
> エスタージ 「──戦いのさなかに、精霊を召喚する術が完成すると、事態はさらにややこしくなってな」
> エスタージ 「もともと精霊同士、あまり仲が良いわけではないからの・・・」
> エスタージ 「例えば、人間が守衛として召喚した精霊と、侵攻してきた精霊の相性が悪かった場合など──」
> エスタージ 「お互いに眷属や、近しい精霊などを次々と呼び出して、術が切れた後でも、とことん争ったという」
> エスタージ 「そうやって戦いは、精霊対精霊の争いをも巻き込んで、どんどん拡大して行き──」
> エスタージ 「混迷の挙げ句、人間対人間という構図すら生じる有様じゃ」
> エスタージ 「そのうちとうとう、どうにも収拾がつかなくなってしまった」
> バァ=ダン 「ひどいもんだな。そんなのを、どうやって終わらせたんだ?」
> エスタージ 「双方の首領同士の一騎打ちで、じゃな」
> エスタージ 「人間側からは、ゾーハル。精霊側からは、メルメトファハス──」
> ビルト 「何でそこで、ゾーハルってのが出て来るんだよ?」
> エスタージ 「人間を作ったのは、ゾーハルだからのう」
> ビルト 「そいつは、知らなかった・・・」
> エスタージ 「結果、両者相討ちになり、ともかく戦いは終わった──というわけじゃ」
> バァ=ダン 「その頃に較べれば、今の世の中、まだまだ平和みたいだな」
> エスタージ 「まあ、そうだのう」
> エスタージ 「・・・おお、ついでにもう一つ。奇岩地帯の怪物達は、元々はその時代に、人間を守るために、ゾーハルが作ったものでな」
> ビルト 「でも、ここの怪物、人間・・・襲うんだよな?」
> エスタージ 「山頂のゾーハルの祭壇に、『レギノの火』が点っていた時分には、おおむね制御できていたようじゃよ」
> ビルト 「その祭壇に、もういっぺん火を点せばいいのか・・・?」
> エスタージ 「いや、ただの火で効果があるかどうかまでは分からんよ」
> エスタージ 「だが、どちらにせよ真っ直ぐ山頂に向かい、それから反対側に抜けるのが、一番の近道じゃろうな」
> エスタージ 「・・・そんな所かの。体の方も、そろそろよかろう?」
> ビルト 「まあ・・・そうだな」
> バァ=ダン 「いつまでも、ぐずぐずしててもしょうがないしな・・・。行くとするか」
▲
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#]U
(ニブルヘダイ、奇岩地帯──)
> ハッシュ 「ちゃんと鎧の手入れはしてるか?」
> ニカ 「バ、バカ! それはこっちのセリフだぜ」
> ハッシュ 「ちっともうまく行ってるようには見えんがな・・・」
> ニカ 「そら、良くはないけどな。悪くもないぞ!」
> ハッシュ 「別に、元々険悪だったわけでもないからな。変わらんって事だろ?」
> ニカ 「う・・・、まあな」
> ニカ 「正攻法で行っても、隊長には通用しないからな・・・」
> ニカ 「こないだはダナンの奴、恋の道は剣の道に通じるものがある、相手の心を読もうとする点では同じで云々──とか言ってたぜ」
> ハッシュ 「そうか、剣とからめたか。それなら隊長も耳を貸しそうだな」
> ニカ 「そうなんだけどな・・・」
> ハッシュ 「なんで、ダメだったんだ?」
> ニカ 「だってそれなら、ダナンの奴が誰よりも強くなってなきゃ、おかしいじゃねえか」
> ハッシュ 「・・・そりゃそうだ」
> ニカ 「隊長に笑われて終わりだ」
> ハッシュ 「さすがだ。やはりこれは、勝負にならなかったな」
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#]V
(ニブルヘダイ、奇岩地帯──)
> バァ=ダン 「もう、時間がないぞ! 早くしてくれ」
> エスタージ 「そうじゃな・・・・・。うむ」
> エスタージ 「──ならば、ムアラク。確か、“ムアラクの元、闇なる地霊ヨルドを封ず” という一節があったはずじゃよ」
> バァ=ダン 「『ムアラク』の逆で──『クラアム』か!」
> バァ=ダン 「クラアム、クラアム、も一つクラアム!・・・どうだ?」
> ビルト 「止・・・・・まった、か?」
> ?? 「ハーッハッハッハ! ホントに止まりやがった! 良かったじゃねえか」
> ビルト 「・・・出たな。で、何者なんだ、お前は?」
> ?? 「そうだな・・・。『ホルトゥン』とでもしておくか。人間どもの呼び名だがな」
> ホルトゥン 「ヨルドの奴が、何でもかんでも見境なく飲み込みやがるおかげで、ひどい目にあったぜ!」
> ホルトゥン 「これだから、地霊ってのは信用できねえ」
> エスタージ 「・・・そうか、ホルトゥン。恐るべき風、あるいは実りの風、の意じゃったな」
> エスタージ 「破壊と共に豊穣をもたらす事から、こう呼ばれるようになった──と」
> ホルトゥン 「知るかよ。オレが目に付く物を片っ端からブッ壊してたら、人間どもが勝手にありがたがってただけだ」
> ホルトゥン 「わざわざ助けるような事、するわけねえ」
> エスタージ 「そのようじゃのう。『大いなる災厄』の折りには、真っ先にメルメトファハスの仲間に加わったようじゃしな」
> ホルトゥン 「へッ。ずいぶん色々と、詳しいみたいじゃねえか」
> エスタージ 「古い文献で、結構見かけたからの。・・・そして、その真の名は、『ゼルバ』」
> ホルトゥン 「お・・・おい、何言ってやがる!」
> エスタージ 「マヌケじゃのう。エピメデスでは、“プネロマの元、恐るべき風ゼルバ封じるに及ばず。ムアラクの元──” と続くんじゃよ」
> ホルトゥン 「そんなもん、信じてんじゃ、ねえ!」
> ビルト 「・・・うろたえ過ぎだな」
> ホルトゥン 「くッ。それを知って、どうなるってんだ!使いこなせるもんなら、やってみやがれ」
> エスタージ 「風の精霊を従える言葉、『プネロマ』に真の名『ゼルバ』を続けて、『プネロマ・ゼルバ』──」
> エスタージ 「これには、“恐るべき風” と言えども抗えぬはずじゃ」
> バァ=ダン 「そうか、よし。だったら・・・、プネロマ・ゼルバ、プネロマ・ゼルバ!」
> バァ=ダン 「とどめに必殺、プネロマ・ゼルバ!」
> ホルトゥン 「ハーッハッハッハ! 全っ然、効かねえなあ」
> バァ=ダン 「話が違うぞ? じいさん」
> エスタージ 「さすがに、解き放つ時のように簡単には行かぬよ」
> エスタージ 「己と世界がぴったり一致した時に言葉を発しなくては、意味がない」
> エスタージ 「すなわち、我であって我でなく、我はなくとも我はあり、の境地でな──」
> バァ=ダン 「分からん! 要点だけにしてくれ」
> エスタージ 「そうよのう・・・。では、ふさわしい時を迎えるためにも、決してその言葉を発してはならぬ」
> エスタージ 「もちろん、言葉自体を消してしまってはいかんが、何としても口には出さぬよう努力するべきじゃな」
> バァ=ダン 「出来るのか、そんなこと?」
> エスタージ 「・・・これ以上簡単には言えんわい。まあ、見ておれ」
> ホルトゥン 「今度はオマエか。懲りねえヤツらだ」
> ホルトゥン 「・・・・・んん? おッ、おお?」
> ホルトゥン 「おいおい! こいつは・・・、ヤバイ!やってられるか!」
> ビルト 「逃げたか・・・」
> エスタージ 「思ったより、簡単な奴じゃったな」
> エスタージ 「奇岩地帯の通路網は、精霊を惑わすように出来ておる。そうそう抜け出せんじゃろう」
> エスタージ 「・・・後は、ヨルドの方を何とかせねばな。すっかり闇が立ちこめておるわい」
> バァ=ダン 「いつの間に・・・。立ちこめるというか、取り囲まれているというか。妙な感じだな」
> エスタージ 「“吸い付く闇” ヨルド。似たような精霊の、集合体だという話じゃがな・・・」
> エスタージ 「真の名はどれも『ヨルド』で良いはずじゃ。大地の精霊を従える言葉、『ムアラク』に続けて、『ムアラク・ヨルド』となるのう」
> ホルトゥン 「──ハーッハッハッハ! アマい。アマいぜ!」
> ホルトゥン 「ヨルドのヤロウは、真の名前だの何だの、そんな小手先でどうこうなる相手じゃねえ!」
> ホルトゥン 「とにかく何でも取り込む。封印の解けたヤツが真っ先に喰ったのが、この“閉じる” 部屋の魔法装置だったみてえだが──」
> ホルトゥン 「そんなのは、幸運でも何でもねえ。結末は同じだ!」
> エスタージ 「うるさい奴じゃのう、まったく・・・・・」
> ホルトゥン 「うおッ。だから、それはよせって! オマエらに付き合うつもりはねえんだ。あばよ!」
> ビルト 「・・・行ったか。ハエみたいな奴だな。いなくなったと思ったら、出てくる」
> バァ=ダン 「それにしてもな・・・。いくら封じられていたとは言え、何でも取り込むような奴のすぐ側に、魔法装置が置いてあったのか?」
> ビルト 「おかげで助かったな」
> バァ=ダン 「何か全体的に、どうもな」
> バァ=ダン 「道を塞いでいるのも大抵、人間を守るために作られたはずの『怪物』や作り物達だしな」
> バァ=ダン 「あまりに杜撰すぎないか?」
> エスタージ 「『災厄』における余裕のなさの現れか、それともゾーハルの性質を反映しているのか──」
> エスタージ 「確かにあちこち、いい加減に出来ているようじゃのう」
> バァ=ダン 「でも、こんなややこしい天井の仕掛けをちゃんと動かすことは出来るんだよな」
> バァ=ダン 「やっぱり、昔の人間はよく分からん・・・」
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#]W
(ニブルヘダイ、奇岩地帯──)
> ビバルツ 『──経過は、以上です』
> エスタージ 「ふむ、なるほどのう・・・」
> バァ=ダン 「さっきからなんだ、この声は?」
> ビルト 「こんなのばっかりだな・・・」
> エスタージ 「人前に姿を現すのを嫌う奴でな。まあ、気にするでない」
> バァ=ダン 「騎士がどうとか、言ってたみたいだが・・・」
> エスタージ 「うむ。エンシュラの聖地を、騎士どもから我らの手に取り戻す事に成功したのだ」
> ビルト 「・・・嘘だろ」
> バァ=ダン 「騎士が、出てったって言うのか?」
> エスタージ 「ある夜、神殿に寝泊まりしていた騎士が、全て息絶えたそうでな」
> エスタージ 「それも傷一つなく、全員がまるで眠っているかのようだったと言う」
> エスタージ 「『いにしえの習いを破り、神殿の中に立ち入り、祭祀にまで口を出す騎士達には、いずれ女神の怒りが降りかかる──』」
> エスタージ 「我々がつねづね言って来た事が、現実のものになったと、騎士達は考えたようじゃ」
> エスタージ 「エンシュラから引き払い、神殿の警護すらよこそうとしない有様らしいの。神殿から立ち退くよう、国王の布令も出たそうな」
> バァ=ダン 「あんたらがやったのか?」
> エスタージ 「いや。そのような手並み、我らにはない」
> エスタージ 「だからこそ、騎士達は恐れおののいて出て行ったのじゃよ」
> ビルト 「じゃあ・・・、本当に女神が?」
> エスタージ 「それも違うのう。女神は、我々人間同士の争い事に、いちいち首を突っ込んだりなどせんのだ」
> バァ=ダン 「あんたが言うなよ。身も蓋もないな」
> エスタージ 「いやいや。そういう細かい事は、我らメルディムが担えばよいのだ」
> ビルト 「だったら何で、人間の行いの乱れっぷりに腹を立てて、砂漠に去ったりしたんだろうな?」
> エスタージ 「それも、我らがそう言ってるだけでの」
> バァ=ダン 「だから、あんたが言うなよ!」
> ビルト 「・・・いいのか、そんなこと話して?」
> エスタージ 「どうせお前らが何を言ったところで、誰も信用せんわい」
> エスタージ 「女神を待つのに、相応しい心構えというものがあるのじゃよ」
> エスタージ 「各々が日々の行いを改め、ひたすらに女神の到来を祈る──」
> エスタージ 「そういった世界を、我らは実現せねばならんのだ」
> バァ=ダン 「・・・まあ、日々の行いはともかく、怪物だの何だののせいで、祈る奴は増えたかもな」
> ビルト 「それじゃ、女神が去った理由は他にあるのか?」
> エスタージ 「うむ。それはのう──」
> ビバルツ 『さすがに、それは・・・』
> ビバルツ 『少なくとも、メルディム指導者の一員とならなくては、知ることは許されない事です』
> ビルト 「出た! ・・・いや、出てないが」
> バァ=ダン 「ややこしいな」
> エスタージ 「・・・なんじゃ、まだおったのか」
> エスタージ 「仕方ないのう。奴がいない時にでも、こっそり教えてやるわい」
> ビルト 「いない時、と言ってもなあ・・・」
> バァ=ダン 「だったら、・・・そうだな。結局、騎士達をやったのは誰なんだ?」
> エスタージ 「『オルシァ』らしいの。まさか、こんな力を秘めておるとは思わなかったぞ」
> ビルト 「・・・誰だ?」
> エスタージ 「『ギューの瞳』に込められていた力──」
> エスタージ 「いや、力ある何者かが、『ギューの瞳』に封じられていた、と言うべきじゃろうな」
> ビルト 「オレらと取りに行った、アレか・・・」
> バァ=ダン 「出所は分かっても、何者かは分からないのか?」
> エスタージ 「あんな所に封じられているぐらいだからの。悪しき精霊か何かじゃろう」
> ビルト 「精霊がまた、なんでそんなことを?」
> エスタージ 「さあのう。我らの願いを、素直に聞き届けたのか・・・」
> エスタージ 「精霊の考える事など、分からんよ」
> エスタージ 「問題は、本来ならば我らがやらねばならぬ事を、どこぞの精霊などが成し遂げてしまった事じゃよ」
> エスタージ 「まったく、情けない話だわい・・・」
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#]X
(ニブルヘダイ、奇岩地帯──)
> ハッシュ 「どうだ、鎧の調子は?」
> ニカ 「その話の入り方、なんとかなんねえのか?」
> ニカ 「・・・どうにもダメだ。ダナンの奴が、ダナンじゃないぜ」
> ハッシュ 「どういうことだ?」
> ニカ 「あいつ、酒が切れると極端に元気がなくなるんだな・・・」
> ニカ 「口数がめっきり少なくなったし、ろれつも回ってねえよ!」
> ハッシュ 「そういや最近、なんだかいつもボーッとしてるみたいだな」
> ニカ 「ああなるって知ってたんだろ? 汚いぜ」
> ハッシュ 「いや、知らんぞ。長いこと酒が手に入らなくなる事なんて、今までなかったからな」
> ニカ 「むしろ、酒が切れた方が酔っぱらってるみたいな感じなんだよな・・・」
> ニカ 「こないだ休む前、いつもみたいに二手に分かれて、危険がないか確かめただろ?」
> ハッシュ 「ああ。隊長達は、怪物に出くわしたんだってな」
> ニカ 「それをダナンの奴が、一撃で倒しちまったんだよ。たまたま急所か何かに当たったみたいで」
> ニカ 「隊長驚いて、いったいどんな技を使ったんです、と聞いたわけだ」
> ハッシュ 「・・・それで?」
> ニカ 「ダナンの奴は、相変わらず夢の中にいるみたいに、ボヤーッとしてたけどな・・・」
> ニカ 「突然ハッとして、『アイノチカラガ・・・』とかつぶやいてたな」
> ハッシュ 「まるでオウムだな・・・」
> ニカ 「隊長大笑いだ」
> ハッシュ 「いよいよダメか」
> ニカ 「いやいや! だから悪くはないぜ。良くもないってだけで」
> ハッシュ 「その話は前にしたぞ」
> ニカ 「なーんかこう、いつのまにか、どういうわけだか、うまく行ったりしねえかな?」
> ハッシュ 「すると思うか?」
> ニカ 「騎士に奇跡は付き物だろ? 頼むぜ!」
> ハッシュ 「オレに言ってどうする。なんか、お前もおかしくなってきたぞ・・・」
> ハッシュ 「──それはそうと、別行動だってのに、二人の様子にやけにくわしいじゃないか」
> ニカ 「あー、後付けたからな。お前には、ちょっとあっちの方見てくる、って言っておいて」
> ハッシュ 「・・・おい。じゃあこないだの見回りの時、ずっとオレ一人だったのか?」
> ハッシュ 「いくらなんでも、冗談じゃないぞ・・・」
> ニカ 「ニブい奴だな。こないだ、じゃなくて、ここんところずっとそうだって」
> ニカ 「まあ、お前なら大丈夫。心配いらねえよ!」
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#]Y
(ニブルヘダイ、奇岩地帯外れ──)
> ダナン 「シャル。オレは、オマエの事が──」
> シャル 「こ、困ります!」
> ダナン 「実はな。シャルが新米騎士だった頃から、ずっとだ」
> シャル 「え。ええっ?」
> シャル 「・・・でもあの頃、恋人いませんでしたっけ?」
> ダナン 「昔のハナシだぜ・・・」
> シャル 「昔の話をしてるんです!」
> ダナン 「これだけは確かだ。オレにはオマエしか・・・いない」
> シャル 「だから、真顔で言っても、露骨に嘘ですって!」
> ダナン 「聞き分けがないな。シャル・・・」
> シャル 「そ、それ以上近づくと、この剣が──」
> ダナン 「はん。剣が何だってんだ」
> シャル 「ダナン──!」
> ダナン 「ぐ・・・・・、おおっ!」
> シャル 「・・・大丈夫ですか?」
> ダナン 「本当にやるとは・・・。さすがだ」
> シャル 「嘘は嫌いですから・・・」
> ダナン 「なら、這って行くまでだぜ・・・」
> シャル 「困ります!」
> ニカ 「──おい。なんか、すごく変だぞ」
> ハッシュ 「とうとう血を見たか。命がけの笑い事だな」
> ニカ 「止めた方がよくねえか?」
> ハッシュ 「他人が入り込める雰囲気じゃないな。・・・悪い意味で」
> ニカ 「大丈夫なのか、アレ?」
> ハッシュ 「ほっとけ。死んだら埋めてやろう」
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#]Z
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][
(滝の神殿地下──)
> リョカ 「アレ? 変だな。道が開けないよ」
> ファテット 「・・・でも、何か音が聞こえるみたい」
> リョカ 「重い物が動くような音だね・・・」
> リョカ 「コノ部屋ではない所で、何か変化が起きてるのかな?」
> ファテット 「そうね・・・。この様子だと、もうひと部屋あるのかも」
> ファテット 「今のままじゃ、中途半端でしょう? 神々の逸話をなぞるなら、『大いなる災厄』の終わりまで行かないと・・・」
> リョカ 「災厄の終わりだって? だったら・・・、モウ一度、『火の間』かい?」
> ファテット 「多分・・・」
> リョカ 「──泥沼化した戦いを終わらせるために、ゾーハルとメルメトファハスの一騎打ちで決着をつけることにしたんだよね」
> リョカ 「デ、いざ戦いを始めてみたら、メルメトファハスの方が強かった、と」
> ファテット 「・・・そこでゾーハルが取り出したのが、『レギノの火』ね」
> リョカ 「でも、炎を解き放つ刹那に、メルメトファハスの攻撃を受けて手元が狂って──」
> リョカ 「大量に溢れ出た炎が、何もかも焼いてしまったんだよね・・・メルメトファハスも、ゾーハルも、世界も」
> リョカ 「アトに残ったのは、デッカイ砂漠ってわけだ」
> ファテット 「・・・神々の逸話は、普通はそこまでね」
> リョカ 「そういやそうだね。マア、ともかく行ってみれば分かるってことかな?」
> ファテット 「そういう事ね・・・」
▲
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#]\
(キュルトンプ、死者の神殿──)
> サロ 「うーむ、ないな。行くか」
> サイナス 「もう調べ終わったのか? ホントに早かったな」
> サイナス 「死体いじりより、遺跡荒らしの方が向いてるんじゃねえのか?」
> サロ 「ふん。冒険者の奴らには負けるよ」
> ゾワース 「いやいや、この手際の良さ。大したものです」
> サイナス 「だよなあ?」
> オルシァ 「そうよねえ」
> サロ 「・・・・・おい」
> ゾワース 「あ、我々のことならお気になさらずに」
> サイナス 「うおお? どっから出やがった!」
> サロ 「お前も何なんだ?」
> オルシァ 「どっからって言われてもねえ」
> ゾワース 「居るべき場所に、居るだけですからな」
> サロ 「バカ言え。ここは死神の住まう場所だ」
> オルシァ 「そうそう」
> サロ 「どこぞの精霊風情なんて、お呼びじゃない」
> ゾワース 「全くです」
> サロ 「からかってるのか?」
> オルシァ 「何か問題あった? 今の」
> ゾワース 「さあ?」
> サロ 「・・・いいだろう。だったら、聞かせて貰おうじゃないか」
> サロ 「お前らがこの場所に、何の関わりがあるって言うんだ?」
> オルシァ 「だから、ここの主でしょ?」
> サロ 「あのな! お前は、『ギューの瞳』に封じられていたんだぞ?」
> サロ 「死神が、封じられたりするわけないだろ!」
> オルシァ 「わけないだろ、って言われても、ねえ?」
> ゾワース 「はあ・・・」
> オルシァ 「チマチマやるのが面倒くさいから、まとめて刈り取ったら、すっかり母様を怒らせちゃったのよね」
> ゾワース 「さすがにあれはまずかったですな」
> オルシァ 「でも絶対に、閉じこめたこと忘れてたと思わない? ひどいモーロク」
> サロ 「適当な話をでっち上げるな! その程度で、死神を封じてたまるか」
> サイナス 「別にいいじゃねえか、死神なんてよ」
> サロ 「死神の役目は、ラウム(魂)を女神の元へと導くことだぞ? 居なくていいわけがない」
> サイナス 「殺すのが仕事なんじゃねえのか?」
> サロ 「違う。人間なんて、ほっといたって死ぬ」
> サイナス 「てっきり、人間を殺して回ってるのかと思ってたぜ」
> サロ 「そっちの方は、純然たる楽しみでやっているようだな」
> サイナス 「うへ・・・。そうかよ」
> オルシァ 「ふーん。封じられてたのが、気にくわないの?」
> サロ 「まあ、そういうことだ」
> オルシァ 「でも母様、いろんなこと出来るから」
> サロ 「ラウム集めまで女神がやっていたって言うのか?」
> サロ 「そう何から何まで、女神一人でこなせるもんか」
> ゾワース 「疑り深いですなあ」
> サロ 「そこまで言い張るなら、そうだな──」
> サロ 「『レギノの火』はどこにある? 女神が持っているのか?」
> オルシァ 「さあ? あるかもね。持ってるのは見たことないけど」
> サロ 「役に立たんな」
> オルシァ 「ラウムで遊びたいの? だったら、人間そっくりの体でも作ったら」
> オルシァ 「たまーにだまされて、ラウムが降りてくるのよね」
> サロ 「今まで散々やったが、そんなこと一度もないぞ」
> ゾワース 「散々、ですか・・・」
> サイナス 「こいつホントに、そればっかだぜ」
> ゾワース 「お互い大変ですなあ」
> サロ 「変なのと意気投合するな! 余計なお世話だ」
> オルシァ 「あー。人間の感覚だと、まれに、になっちゃうかもね」
> サロ 「とことん役に立たんな・・・」
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#]]
(キュルトンプ、死者の神殿──)
> オルシァ 「え。あなた達、母様を連れ戻しに来たの?」
> ゾワース 「どうも話が食い違ってますな」
> オルシァ 「ひとこと言い残して行くのを忘れたとか?」
> ゾワース 「いくら何でも、そんな大事なことを忘れるものですか」
> オルシァ 「そうよねえ。ま、どうでもいいか」
> ゾワース 「説明してやったらどうです?」
> オルシァ 「めんどくさい・・・。そっちの解説好きさんに頼めば?」
> サイナス 「おい、呼ばれてるぞ?」
> サロ 「うーむ、どうもな・・・」
> サロ 「そりゃ確かに、無知な奴らに教えを垂れてやるのは好きだがね」
> サイナス 「死体いじりと解説しか楽しみがねえもんな」
> サロ 「だから、それだ! 最近、妙に扱いがぞんざいじゃないか?」
> サイナス 「そうかあ? イヤならやめて行こうぜ」
> サロ 「待て。それはそれだ。やってやろうじゃないか」
> サイナス 「何だよ。結局やんのかよ」
> サロ 「──そもそも、女神の力というのは年々衰えていく類のものなんだ」
> サロ 「失った力を取り戻すためには、定期的に眠りにつく必要がある。死と復活の眠りにね」
> サロ 「聖樹の幹に血を降りかけ、その根元に体を横たえて、目覚めを待つんだ」
> サイナス 「何だそりゃ! 初めて聞いたぜ」
> サロ 「長い年月の間に、この知識は葬り去られてしまったからな」
> サイナス 「つまんねえことするもんだぜ」
> サロ 「ゾーハル亡き後に起こった王国は、たいてい女神を主神にすえたんだ」
> サロ 「だが、王国の象徴とも言うべき存在が年々衰えていくという考えは、おおむね嫌われた」
> サイナス 「ホントのことなら、嫌ったってどうにもなんねえだろ?」
> サロ 「いや。女神が眠りにつくのは、三百年ごとぐらいだからな。知らないふりをしても、結構何とかなったんだ」
> サロ 「今まともに記述が残っているのは、メルディム秘蔵の文献ぐらいじゃないか?」
> サイナス 「それを何でお前が知ってるんだよ?」
> サロ 「そりゃ、仕事に必要だと言って潜り込んでしまえば、後はどうとでもなる」
> サイナス 「・・・やっぱコソドロだぜ」
> サロ 「ふん。お前が知らないことの方が問題だ」
> サイナス 「誰が読むかよ。あんなカビ臭い本なんてよ」
> サイナス 「でも良く分かんねえよな。死にたかったら、人なんか呼び付けねえで、勝手に死ねばいいんじゃねえか?」
> サロ 「女神は自らが持つ大地の力に、強い耐性があるようだ。つまり死ねない」
> サイナス 「だったら首でも吊れってんだ」
> サロ 「そんなので女神が死んでたまるか」
> サロ 「むしろ分からないのは、女神の子供達だな。充分な力を持っているはずだが?」
> オルシァ 「私達の力は、父様や母様には通用しないから・・・」
> オルシァ 「そうでなくても、身内が殺すと力が移っちゃうのよね、どうも」
> オルシァ 「むかし父様が眠りにつかせたら、『ものを作り出す力』が移っちゃったし」
> サロ 「何だって? ものを作り出すのは、元々は女神の持つ力だったのか?」
> オルシァ 「知らなかった?」
> サロ 「じゃあ、女神がゾーハルを産み出したというのも、本当なのか?」
> オルシァ 「・・・みたいね。そもそも、母様が定期的に死ぬようになったのも、父様を産み出してからだとか」
> サロ 「ロクな事がないな。ゾーハルさえ作らなければ、女神は唯一にして完全なる存在だったんじゃないか」
> サロ 「後悔してるんじゃないのか?」
> オルシァ 「さあ。力を失ったのは嬉しくないだろうけど、後悔してるのかしらね?」
> オルシァ 「何せ、一人の時はとにかく退屈だったみたいだし」
> サロ 「退屈と引き替えか。そこまで犠牲を払うほどのものなのか?」
> オルシァ 「まあ、いいじゃない。天の彼方の火を取って来るなんて、父様じゃなきゃ思い付く事じゃないもの」
> ゾワース 「その火で作った人間達が、女神様が眠りにつくのを手伝う──上手くできてますな」
> サロ 「そんな面倒なこと、僕は手伝うつもりはないがね」
> オルシァ 「・・・たまに、やたらと強い力を持った人間が現れるのは知ってた?」
> サロ 「ラウムとの相性が関係してるんじゃないかと言われてるな。何が言いたい?」
> オルシァ 「母様が待ってるのは、そういう人間。心配しなくても、サロはお呼びじゃないから」
> サロ 「何だと! 僕なんか問題にならないって言うのか?」
> サロ 「それほどの力を持った奴がいるなら、お目にかかりたいもんだね」
> オルシァ 「あれ。顔見知りじゃなかったの?」
> サロ 「・・・まさか、そこの冒険者の諸君か?」
> オルシァ 「少なくとも、サロとは雲泥の差よね。見るからに」
> サロ 「見た目で何が分かる!」
> ゾワース 「輝き、ですかな?」
> サロ 「くっ・・・。そんなあやふやな物が、何だって言うんだ!」
> サロ 「いいだろう。どちらが先に女神の元へ辿り着くか、よく見ているがいい」
> サロ 「行くぞ、サイナス!」
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